1ZZ エンジン オーバーホール


とあるTC2000の走行会に参加した際、ややパワーダウンしたような感じになり、走行後にエンジンから異音が・・・。

カタカタと結構大きい音なので、メタルかな?と思いましたが、帰りの道中も特に音が酷くなるわけでもなく、マフラーから白煙が出てきたので、これはピストンが壊れたなと。

帰宅後、早速コンプレッションゲージを取り付け、圧縮圧力を測定。


←計測結果はご覧の通り。

3番シリンダーがちょっと低い数値ですがそんなに致命的に駄目な数字でもないですねぇ。

基準値は知りませんが、その3番を除いては18万キロ走行のエンジンの割りにイイ数字ではないでしょうか。


コンプレッションを計る際に当然プラグを外すので、プラグのチェックは先にしており

先の圧縮圧力値の照らすと、どうやら3番シリンダーのピストンが棚落ち、2番もちょっと落ち、みたいなところでしょうか。

(プラグは右から1番)


シリンダーに傷が入っていることが予想されるので、さっさと中古のエンジンを購入してしまいました。

某オークションでミッション付き11万キロエンジンを送料を入れて¥50000-で落札。

1ZZは安いですね〜。

ミッションの予備もいっぺんに手に入ったのでめでたしめでたし。

エンジンの状態は出品者(業者さん)のコメントでは「降ろすまで問題ありませんでした」との事。


もちろん「はいそうですか」とポン付けするわけにはいかないのでオーバーホールしてから乗せ換えます。

補器類は錆びていて使えそうにないのでどんどん外してポイポイ捨てます。

クラッチも少し前に取り換えたばかりなのでポイポイと捨て、フライホイールを外していた際、

「1ZZのフライホイールってやけに軽いんだなぁ。エンジン小さいからかな」

等と思いながら裏側を見てみるとだいぶ薄っぺらいフライホイール。

「1ZZってこんなに攻めてるの?MR-Sのだけなのかな?」


と、何気なく表側のクラッチの粉を拭き取ったら・・・。


戸田レーシング」さんのフライホイールでした(笑)

ネットで調べてみたらクロモリ製の超軽量フライホイール

お値段はなんと¥46000-

エンジン代の元を取ってしまった、ラッキ〜〜!!(笑)

もしやと思ってさっきスクラップ置き場に捨ててきたクラッチカバーとディスクを回収してきたら・・・。

TRDのカバーとディスクでした(笑)

使うか分からないけど一応キ〜〜プ。


ヘッドが外れたので、一応バルブクリアランスを測定して異常がないことを確認してバルブを外していきます。

自作バルブスプリングコンプレッサーでスイスイ分解です。


続いて腰下を分解し始めましたが、ここで思わぬ故障個所発見〜!

1番、2番、3番と分解してきて、「なかなかいい状態じゃないの。前オーナーのオイル管理が良かったんだね」等と思いながら4番シリンダーのコンロッドを抜いてくると・・・。

←なんとコンロッドメタルがボロボロにの状態でした。

これではエンジンを掛けたら異音も出てたんじゃないのかな?


やべぇ、クランク駄目だったら高くつくぞと早速クランクシャフトをチェックしたところ・・・。

特に傷や焼けも無く、指で触っても分からないくらいの縦筋が入っている程度でした。

どうせジャーナル部は全てラッピング(磨き)する予定なので問題ないでしょう。

一安心。


ピストンとコンロッドを分離し、コンロッドの重量測定。

さて一番重いコンロッドと一番軽いコンロッドの重量差は・・・「0.4g」

更に4本の内2本は全く同じ重量。

いやいや、SR20と比べたらすごい精度ですね(笑)

これなら特に重量合わせとかしなくてもいいかも?


バルブはカーボンで真っ黒け。

カーボンの堆積具合が酷いので、オイルが燃えてたようですね。

バルブオイルシールがカパカパだったのでオイル下がりしてたかもしれません。



カーボン落としには定番の電動ドリルを使用。
グリップハンドルのボルトを長い物に交換して作業台に固定して作業します。

今回はSR20の時と違ってあまり時間を取れないので、ざっくりと汚れを落す程度でやめておきます。


ササっと削って汚れがキレイに落ちたのでバルブ清掃はこれで終了。


ピストンは純正の新品を使用します。

オーバーサイズピストンの設定が無いので同じサイズのSTDピストンです。

実際、大昔と違って10万キロや20万キロでシリンダーがすり減ってしまうなんてことも考えられないので問題になる事もないんでしょうけど。

とりあえず重量のデータを取ります。

ピストンとピストンピンの合計で一番重い物と軽い物の最大差は1g。

コンロッドの重量差0.4gをピストンとの組み合わせで最小化すれば重量合わせの為の研磨はほんの少々で済みそうです。


重量合わせの前にピストントップの鋳肌部分を磨き取ります。

真っ平らのピカピカにしたい所ではありますが、中央部に意図的に施してあるのか特に意味はないのか不明な直径40mm位、高さ0.2mm位の出っ張りがあって、さすがにこれを全部平らなるまで削ってしまうと圧縮比が下がってしまう恐れがあるので、ちょっと不満は残りますがこの部分はあまり削らずに残す事にします。


並行してポート研磨も作業中。

こちらもピカピカにしたい所ですが何せ時間が無いんで大雑把で済ます予定。


とりあえずピストンの鋳肌磨きは終わりました。

だいぶ工程を省略しているので写り込みも甘く、全く鏡面にはなっていませんが、自分的にはギリギリ許容範囲なのでこの辺でやめておきます。

結局、機械加工の「段」はどうしても気に入らなかったので角張っている部分は削ってしまいました。

ただ盛り上がり部分を削除してしまったわけではなく、周囲となだらかにつながるようにしただけで、盛り上がりそのものは残してあるので特に影響はないでしょう(?)


ポート研磨はまだまだ時間が掛かるので、腰下を進める事にします。

先ずはクランクシャフトのラッピング処理をします。

昔は手でシャカシャカ磨いていましたが、今はもっと楽な方法で行っています。

用意するのは細かいサンドペーパー。

ジャーナル部の微細な傷を消すのが目的なので耐水ペーパーの#2000程度。

仕上げ前、また状態が良い場所にはラッピングフィルムの#10000(1万)を使用しました。

後はジャーナルの幅に近いマスキングテープ。(今回は18mm幅)


ペーパーの裏からマスキングテープを貼ります。

1枚ではちょっと弱いので2回重ねて貼ります。

長さもちょっと短いのでペーパーを縦に2枚、マスキングテープで連結します。


出来上がりはこんな感じ。


シリンダーブロックに古いメタルを載せてオイルを塗り、クランクシャフトを載せます。

まずはコンロッドが嵌るピンの部分を磨いていきます。

さっき作ったペーパーベルトのペーパー面がジャーナルに接するように通してから外側をマスキングテープで固定して輪っかにします。


輪っかの中に電動ドリルのチャック部分を入れ、少し引っ張ってテンションを掛けながら電動ドリルを回転させて研磨します。

ペーパーには目詰まり防止に少量の水を塗っておきます。

場所的にオイルを使いたくなるところですが、オイルを塗っちゃうとドリルチャック部が滑ってペーパーが回らなくなってしまうので注意。

ドリルを回転させながらゆっくりクランクシャフトを手で回して全周を均等に研磨していきます。

相手は鉄の塊なので、#2000程度であれば削りすぎの心配をする必要は無いでしょう。

クランクのメインジャーナルを磨く時は磨く場所のメタルを取り外します。

メタルの厚み分(2mm位?)隙間が出来るのでその隙間にベルトを通して同じように作業します。

実際には両端だけメタルを入れて中の3カ所を磨き、終わったら中3カ所にメタルを入れ、両端のメタルを抜いて磨きます。


続いてペーパー傷を取って艶を出す為に柔らかい布に研磨剤を塗って磨きますが、同じように細切りした布にマスキングテープを貼ってベルト状にして磨きます。

ピン部は厚みがあっても問題ないのですが、メインジャーナルを磨く際に厚みがあるとメタル分の隙間に入らなくなるのでなるべく薄い布を使います。

使ったのは塗装の磨き作業の最後に使うようなフェルト(?)みたいな布。


←中央のピン部が磨き終わり、メインジャーナルはまだ何も手を付けていない状態。

画像では分かり難いかな?

実物ではかなり艶の程度が違います。


ブロックはこれからメタルの計測とかピストンリングの合口測定とか組立て準備に入ります。

実は今まで一度も「エンジンスタンド」なんて洒落た物は使った事がありませんでしたが

ガレージの飾りにもなるかなと思い(?)買ってしまいました(笑)

ま、5000円程度の安物ですが、コレがあるだけでちょっとショップっぽくてイイですね(笑)


ポートの方もほぼ終了しました。

←エキゾーストポート。

あまり時間を掛けてないので鋳肌を落としてちょっと磨いただけ。



←インテークポート。

仕上がりはエキゾーストと同程度ですが、ポート中央に飛び出しているインジェクターのボス部分は肉厚が結構あったので、3mm程度削り込んで山を低くして抵抗物を減らしておきました。


燃焼室も程々でやめておきます。

ただ、燃焼室の前後方向に機械加工時の変な形の出っ張りがあったので、それは削り落としてしまいました。


バルブの摺合せを行い、漏れのチェックをしているところ。

摺合せはインテークはバルブコンパウンド細目、エキゾースト側はちょっと荒れ気味だったので中目でちょっと研いでから細目で仕上げ、インテーク、エキゾースト共最後はピカールを塗って摺合せを行いました。

バルブとバルブシートをきれいにパーツクリーナーで掃除し、バルブを差し込んで燃焼室にガソリンを満たして漏れ出しが無いか確認します。

一か所だけほんの少し滲んだので、そこだけ少し研ぎ直して完了です。


オイルポンプも分解してギアの傷とかをチェック。

特に問題無さそうなので洗浄して組み立てます。

リリーフバルブには少しワッシャーでもかませておきましょうかね。


カムシャフトのジャーナル部をラッピングしておきます。

ホルダーも同様に処理してあります。

リューターにバフを付けてピカールで磨くだけなのでラクチンです。


エキマニは社外品と行きたいところですが、MR-Sは触媒と一体型なのでそうもいかず、純正を再使用しますが、鉄パイプ製なので鋳物マニと違ってポートに合わせて削る事が出来ません。

鉄パイプも雑にフランジに差し込んで溶接してあるので、パイプの肉厚分の段差がもろに出ています。

あまり肉厚も落とせないのですが、出来るだけ段差による悪影響が出ないようにテーパーに削っておきました。


ブロック側の組み立て開始。

プラスチゲージでクランクメタルのクリアランスを測定し、メタルをラッピングして組み込みます。

クリアランスは基準値(0.03mm)よりちょっと広い0.04mm。

限度値が0.05mmとの事なので、やや多いですがまぁ問題無いでしょう。

赤い液体はSR20の時にも使ったエンジン組立て時に使うオイル、「アッセンブリールーブ」です。


ピストンとコンロッドをなるべく重量が揃うような組み合わせで組み立てました。

計算上、最大差は0.4g。

ピストンリングまで組み込んで総重量を比較してみましたが、計測値は全てが820.5g

デジタル秤の最小測定値が0.5gまでなので、一応計算通りに収まった事になります。


メタルにトラブルが出ていたエンジンなので、元々コンロッドボルトは新品に取り換える予定で部品は揃えていましたが、一応古いコンロッドボルトと比較してみました。

←左が古いコンロッドボルト

0.5mm程伸びています。

限度値は分からないし、再使用できるのかも知れませんが、1本200円程度なので取り換えておいた方が無難でしょうね。


ピストンをシリンダーに押し込み、古いボルトでコンロッドを締め付け、コンロッドメタルのクリアランスを計測。

計測値は0.05mm。全シリンダー基準値内なので問題無く、新品ボルトで本締め。



オイルポンプ、オイルストレーナーを組付けていきます。

オイルポンプのリリーフバルブには組付け前に2mm厚のワッシャーを入れてあります。

この後オイルパンを取り付けて腰下の作業はほぼ完了。


ピストンと燃焼室を少々研磨したので圧縮比を実測し、修正する面研量を算出します。

燃焼室容積の測定はSR20の時に使った自作のビューレットで行います。

測定液は後始末が楽なのでH2Oで。

計測の結果、燃焼室容積は35.3cc。
ピストントップはヘッドより少し上に出ている部分があるのでピストンを下げて計測し、
容積は-11.4cc。
ヘッドガスケットは取り外した古い物をマイクロメーターで計測、厚みは0.7mmでした。

以上から算出した圧縮比は9.93:1

公称の圧縮比は10:1との事なので、やはり削った分、いくらか圧縮比は落ちてますね。

この程度なら誤差の範疇(?)なのでこのまま組んでも問題ないかもしれませんが、修正を兼ねて0.1〜0.2mm程面研して元の圧縮比程度に戻しておく予定です。


ヘッド面研は結局0.3mmで依頼し、出来上がってきたヘッドの燃焼室容積を計測したところ、34.5cc。

圧縮比を計算したら10.07:1。

ほぼ公称の圧縮比になりました。

早速新品のバルブオイルシールを組み込み、バルブクリアランス調整に入ります。

カムシャフトを片側ずつ取り付けて計測し、修正値を書き出しておきます。

基準値はインテークが0.15〜0.25、エキゾーストが0.25〜0.35。

基準値の幅が広いので、計測値は全てこの中に納まっていますが、バルブ摺合せをした分、全体にいくらか狭い感じなので少し調整します。


このエンジンはシムを使っておらず、バルブリフターその物の厚みでバルブクリアランスを調整しているので、真面目に調整する場合は必要な厚みのバルブリフターを注文して交換しなくてはいけませんが、そんな予算も時間も無いので削って調整します。

基本的にバルブ摺合せをした場合はクリアランスは狭くなる方向なので、削るだけで調整出来ます。

実は過去に自分のエンジンのO/Hでシムを買って交換した記憶がありません。

毎回削って調整してます(笑)

リフターの厚みをマイクロメーターで計測し、削り量を各バルブ毎に正確に把握しておきます。


削りにはボール盤に回転砥石を付けて行います。

リフターはかなり硬いので結構思いっきり削っても大丈夫です(?)

削り量は最小で0.02mm、最大のところでも0.05mm程度でした。


バルブクリアランスは下限一杯まで詰めて調整し、IN 0.15mm EX 0.25mm 

ブロックとヘッドを合体し、カムチェーンを掛けてクランクを回転させてみます。

フロントカバーを付けないで回転させるので、テンショナー代わりにタイラップでチェーンガイドを固定してチェーンを張ってあります。

いくらNAエンジンでも0.3mmの面研でまさかバルブやピストンが干渉する事は無いとは思いますが、ちょっと緊張します(笑)

回した手応えでは特に違和感も無いので問題無いでしょう(?)


少し磨き込んだフロントカバーとゴールドに塗ったヘッドカバーを取り付け。

インジェクターやセンサー類、その他付属品を取り付けていきます。


色々と忙しかったので遅くなりましたがエンジン搭載〜。

中古エンジンに付いていたスロットルボディーをそのまま付けたら冷機時アイドリングしないとか、エキマニの遮熱板が錆びついて使い物にならないで新品に交換したりとか、カムチェーンテンショナーを新品にするのを忘れていたので載せてから取り換えたとかありましたが、無事に始動。

エンジンを修理している間に車検が切れてしまい、試運転はまだ出来ないので、アイドリング+αでアタリ付けを行います。
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