アルト用カーボンボンネット製作


少し前の工作で樹脂が余っており、取っておいてもそのうち使えなくなってしまい、勿体ないので、何か作るものはないかと探し、樹脂の残量で作るのに丁度良さそうな大きさのアルトのボンネットを作る事にしました。

アルトバン2号機製作の第一段階として軽量な「カーボンボンネット」を製作します。

ダクト類はアルトバン1号機から移植するので、形状はノーマル形状にします。

2号機のボンネットを取り外し、ツヤが無い状態のボンネットをポリッシャーでコンパウンド掛けして磨きます。

実はFRP自作あるあるなのかもしれませんが、意外と「ノーマルパーツ」をFRP化する機会は少ないかもしれません。

自分も長い事FRP工作をしていますが、純正部品をマスター型にしてメス型を作るのは初めてです。

なのでいつもは一番時間が掛かるマスター型がすでに存在する状態からスタートするのは何とも不思議な気分です。


コンパウンドでしっかり艶を出したところに離型ワックス処理を施します。

いつものように5回、塗って乾かし拭くを繰り返します。

ウォッシャーノズルは取り外して裏からアルミテープを貼り、粘土を詰めておきます。


離型処理が終わったらボンネットをひっくり返し、フランジを取り付けます。

ボンネットのフチに両面テープを貼り、そこに5〜60mm幅に切ったプラダンを貼り付け、補強の為に養生テープを貼っておきます。

いつもは塩ビ板かアルミ板でしっかり作るんですが、今回は廃材利用で予算削減です(笑)


ボンネットとプラダンの間には少し隙間が出来ますが、そこには粘土(レオン粘土硬度H)を詰めて均します。

指で押し込んでからヘラで掻き取って成形しますが、ボンネットとフランジが浅い角度で繋がるようにボンネットからフランジに向かって斜めに成形します。


離型ワックスは拭き残しが無いように念入りに拭き(拭き残すとこの後のPVAがハジく)、PVAを原液のままスポンジで薄く塗り伸ばして乾燥を待ちます。

PVAは表面は直ぐに乾きますが、中までしっかり乾燥するまでには結構時間が掛かります。

PVAの塗り厚や気温にもよりますが、特に急いでいなければ1日位乾かした方が無難です。


ゲルコートは型用の在庫が無かったので、これまた余っていた製品用ゲルコート(黒)を使用します。

ゲルコートはトラブルが起きやすいので何度か注意点等を書いてきましたが、再度確認の為。

1,ゲルコートを缶から取り出す前に良く混ぜる

2、粘度調整の為アセトン又はスチレンモノマー、タルク等を入れる事がありますが、その際もとにかく良く混ぜる

3、膜厚が薄い部分は硬化が想像以上に遅くなる為、縮みが起こりやすいので膜厚はある程度厚めに塗る。

4、ゲルコートは完全に硬化させてから積層。

今回はスプレーガンで吹き付けるので、アセトンでは5%希釈しました。
手で混ぜるのは大変なのでスクリューを作り、電動ドリルでしっかり混ぜます。


ゲルコートをガン塗りする場合、いつもは職場に持っていき、塗装ブースの中で塗装するのですが、今回はフランジの取付が頼りなく、軽トラでの輸送に耐えられそうになかったので(笑)自宅ガレージでガン塗りします。

自宅ガレージで作業する場合、通常刷毛塗りにするんですが、刷毛塗りだとどうしても膜厚にムラが出来、膜厚を確保する為に2回塗りする事になるし、そもそも刷毛塗りは苦手であまりきれいに塗れない事が予想されるので、ガン塗りにする事にしました。

ガン塗りだとゲルコートが飛散して周囲を汚してしまう可能性が高いですが、スプレーガンの調整と塗り方でゲルコートの飛散をかなり抑える事が出来ます。

スプレーガンの口径は最低でも2.5mm、本当は3mmとか欲しいですが、手持ちのガンは某オクで980円で購入してあった2.5mm。

エア圧はゲルコートが噴射出来るギリギリまで「低く」、吐出量は全開、パターン幅はあまり広がらないよう狭めに調整します。

この状態だと狭い範囲にボトボトと吹く感じなので、スプレーガンの運行速度は「ものすごく」ゆっくりにします。

スプレーガンと塗布物の距離は3〜5cm程度と、極端に近づけて塗ります。


上記のように塗ると多少時間はかかりますが周囲に殆どゲルコートを飛散させることなく塗布する事が出来ます。

ボンネットの周囲はボンネットより30cm程度広めに養生してありますが、ゲルコートが付いたのはボンネットの外10cm程度です。

1回目は5%希釈で超ゆっくり塗って確実にゲルコートを乗せ、2回目は様子を見ながら伸びがあまりにも悪いようならもう少し希釈して1回目のゆず肌を少し伸ばす感じで塗ります。

1回目と2回目の間隔は特にあけません。

1回目が終わったら2回目用のゲルコートを作り、直ぐに塗り重ねる感じです。

角部(今回の場合だとボンネットのフチ、粘土を入れたあたり)は膜厚が薄くなりがちなので余分に吹き付けます。

このボンネットの大きさで使用したゲルコートは600g、硬化剤は1%配合です。

ゆず肌は残りますが、刷毛で塗るよりはるかに均一に塗る事が出来ます。


今回ゲルコートは塗布後24時間放置(気温25℃前後)

表面を触っても全くベタつきが無い事を確認し、積層開始します。

最初はちょっと頼りないフランジ部から。

ボンネットとフランジの境目、粘土を入れた辺りに樹脂とタルクを混ぜた樹脂パテを刷毛で置いておき、硬化を待たず、直ぐに#450マットを細切りにしたものを2プライ積層。

その際の樹脂にも少しタルクを混ぜて粘度を増してあります。

使用した樹脂は低発熱低収縮樹脂(ノンパラ)です。

ガレージ内の温度が27℃と、少し高めだったので、硬化剤は遅硬化タイプを1.5%で調合。


2時間ほど放置し、ある程度硬化したところでフランジも含め全面に#450を3プライまとめて積層。

硬化剤はそのまま遅硬化タイプを1%で調合。

樹脂量はボンネットの面積が1u強なので、1プライあたり900g計算で用意。

ほぼ平らな形状なので、900g作った樹脂を容器から直接ボンネットの上にぶちまけて繊維を置き、幅の広いローラーで一気に塗り広げ、これまた幅広のブラシローラーでエア抜き。

これを3回繰り返して最後に鉄ネジローラーで余分な樹脂を型の外に押し出しました。


翌日まで放置して硬化させ、補強を入れます。

補強には三角の発泡面木の頂部の角に鉋を掛けて丸めた物をホットボンドでメス型の上に接着。

本当は角材なんかでガッチリ補強した方が良いのですが、おそらく、というか間違いなく成型品を1個しか抜かないので手間を掛けず簡素にしました。

同じ理由で今回ボンネットの「裏骨」も作りません。

別な方法で必要な剛性を出すことにします。。


接着した発泡面木に細く千切った#450マットを2プライ被せて樹脂を塗り、メス型積層完了。


丸一日放置して硬化後、脱型。

浅い型なので4隅にプラスチックのクサビを軽く叩き込んだだけでバリっと脱型出来ました。

状態は良好。

ゲルコートの縮みは一切無く、ピンホール等も見当たりません。

まだらに見えるのはPVAの痕です。


マスター型になったノーマルボンネットですが、一部塗料が剥がれてしまいました。

どうやらこのボンネットは一度補修塗装しているようで、下地と密着の弱い部分がメス型にくっ付いてきてしまったみたいです。

純正の塗装ならこんな事は起こらないと思いますが、再塗装してあるパーツから型取りする場合は注意が必要ですね。


脱型したメス型はPVAの痕を#600のペーパーで水研ぎして消し、その際に出来た#600の目を#1200のペーパーで軽く目消した後、コンパウンドで磨きました。

ほぼ平らな形状なので、ほとんど電動ドリルにパッドを付けて磨く事が出来た為、艶々ではありますが、実はそんなに時間は掛かっていません。


「ワンオフカーボンアンダーパネル2」に続き、今回もバキュームレジンインフュージョン工法で製作します。

アンダーパネル製作でカーボンクロスの間に発泡材を入れるだけで格段に剛性が上がる事、発泡材を後から接着してサンドイッチすると、その際に使用する樹脂の量がけっこうバカにならず重量増になる事、等から今回は表裏のカーボンクロスと間に挟む発泡材を一回でまとめてインフュージョンしてしまう事にします。

海外の動画でそんな感じで作っているのを見たので真似してみる訳ですが上手くいくかな?

ホームセンターでそれらしい5mm厚の発泡材(材質は明記されていないので不明)を買ってきてこんな感じで切り出します。

色んな色の物がありましたが、透けるとアレなので黒を使用。


インフュージョン時の真空と樹脂の通り道にする為、ドリルで穴をいっぱい開けておきます。

穴径は3mm位、間隔は30mm位・・・適当ですけど。

板の端はカーボンクロスが浮かないように斜めに削っておきます。


離型ワックス処理をします。

いつものようにボンリースワックスを5回処理しますが、ワックスがけも電動ドリルでやってます。

ワックス処理の後はPVAを塗って乾燥させます。

メス型製作時は原液で割としっかり、厚めに塗りましたが、今回はスポンジに水を含ませてやや薄めに塗りました。


丸一日放置した後クリアゲルコートを塗ります。

クリアゲルコートの手持ちの残量が200gしか無かったのでこれを使い切りました。

硬化剤1%、アセトンで10%希釈して自宅でガン吹きしました。


ゲルコートが半硬化、少しベタ付きが残っているうちにカーボンクロス1枚目を貼ります。

これはゲルコート塗布後、3時間位経った頃に硬化具合を確認したところ、クロスを貼るのに丁度良さそうなベタ付き具合だったのでそのまま貼ってしまっただけで、完全硬化後にスプレー糊で貼ってもOKです。

1枚目が貼れたらすぐに2枚目も貼ってしまいます。

これはスプレー糊で貼りました。


その上からサンドイッチする発泡パネルをこれまたスプレー糊で貼り付けて重しを置いて密着させます。


発泡パネルがしっかり付いたらボンネット周囲に50mm幅くらいのカーボンクロスを貼り、最後に全体に1枚、カーボンクロスを貼ります。

全体がカーボンクロス3プライ、周囲が4プライという構成です。

(ヒンジ取り付け部付近のみ更に2プライ程度貼り増してあります)


次にピールプライ(ピールクロス)の代用品である「防草シート」を貼ります。

このサイズで700円位、透水性が高く、網目が細かい物です。


貼り具合が裏側の仕上がりに直結するのでなるべくきれいに貼ります。

3分割にカットして貼りました。

これもスプレー糊で貼り付けてあります。


その後農業用ネット(4mm目)を置き、樹脂とバキューム用のホース類を配置し、最後に農POフィルムをブチルゴムで貼り、バキュームの準備完了。

今回はボンネット後部の両サイド2箇所から樹脂を注入、ボンネット前部中央からバキュームで引く事にします。

早速真空引きを開始します。

ところでこれはインフュージョンをやる際、毎度の事なんですが本当に微細な漏れが中々見つける事が出来ず、漏れを止めるまでに結構時間が掛かります。

シューシュー音がしている段階ではもちろん簡単に発見できますが、最後の最後、真空ゲージ見て数分で1目盛程度しか減らないようなものは音がしないので特定する事が非常に困難です。


今回もほんの少しだけ漏れがあり、何とか漏れ箇所を特定しようと色々試し、うまくいった方法があったので、真空漏れに悩んでいる方(?)の参考になればと一応ご報告しておきます。

インフュージョンで真空漏れが発生するのは殆どの場合シーリングテープでメス型に貼っている部分からなので、その部分にパーツクリーナーを「シュワシュワ」と弱めに吹きかけます。

漏れがちょっと多めの場合は洩れている箇所でシューっと音が出るのですぐに分かります。


もっと漏れが小さい場合は音では判断できないので、パーツクリーナーを吹き付けた後じっくりシーリングテープより内側を観察します。

漏れがかなり小さい場合はちょっと待ちますが、テープより内側にパーツクリーナーの溶剤が含浸していくので目で見て判断する事が出来ます。

漏れている部分を修正し再度パーツクリーナーを吹き付けて漏れが止まっている事を確認します。

浸み込んだパーツクリーナーの溶剤は樹脂を含浸させると全く分からなくなるので心配は無用です。
(今回のボンネット脱型後に確認しています)


真空漏れが無くなったのでインフュージョン開始。

使用する樹脂はアンダーパネルに使ったのと同じエポキシ樹脂。

順調に含浸しています。


・・・この辺りまでは・・・。

この数分後に事件発生!

エポキシ樹脂を入れた容器から煙が立ち上ってきました!!

急激に硬化反応が始まったようです。

もちろん容器いっぱいに樹脂を作るようなことはせず、少な目に作って随時補充するつもりだったのですが、含浸時間が掛かりすぎるのか、気温が高いのか、とにかく含浸が全く進まなくなりました。


樹脂供給のホースの中も固まりだして樹脂を全く吸わなくなってしまい、このまま終わりにすると脱型をする前にして高価なゴミになる事が確定するので、急遽大慌てでバキュームバッグを一部めくり、ホースを突っ込んで再度ブチルでシーリング、急いで樹脂を作って無理やり最後まで流し込みました。

当然、一度全体の真空が無くなってしまったので失敗作になることは確実ですが、「せめて「形」にだけでもなってくれ!」と祈りながら硬化を待ちます。


24時間放置後脱型。

当然ですが・・・失敗ですね(笑)

やはり含浸途中で樹脂が硬化してしまったようで、含浸していない部分があります。

それでも「想像していたよりは」酷くはなかったですが・・・。

一応、「形」にはなっているし(笑)

それと、これはかなり意外な結果ですが、最後に無理やりホースを入れて樹脂を流し込んだ部分(ボンネット前端付近中央〜右側)は「妙に」きれいに仕上がっています。


一番酷い部分、左前部のこの白くなっている部分が樹脂の含浸が甘く、繊維が浮いています。

押すと中に空気が入っている感触でブワブワします・・・。

丸いのは発泡材に開けた穴の位置だと思われます。


中央前側は発泡材をボンネットの曲面に沿うようにカッターで横に切れ目を入れた部分が浮き出たようで、横縞になっています。


含浸前半部分、ボンネットの後ろ半分は非常にきれいに、気泡も一切なく仕上がっています。

成形品としては失敗作ですが、サンドイッチにした発泡材の穴をちゃんと樹脂が通り抜け、表裏を一度にインフュージョン成型出来るという事が確認出来ました。


材料代だけで2万円以上かかってるので何とか使えるように出来ないかと補修を試みましたが・・・。


さすがに無理でした・・・。


失敗したまま終われないので、カーボンクロス、エポキシ樹脂の残量もギリギリ何とかあと1回分程度残っているので作り直すことにします。

メス型を掃除し、離型処理を行いますが、クリアゲルコートを使い切ってしまったのでさてどうしたものか。

色々考えた末、インフュージョン時に使用するエポキシ樹脂をゲルコート代わりに塗ってしまう事にしました。

ただエポキシ樹脂は粘度がそこそこ高く、ガン吹き出来る粘度ではないうえ、アセトンとかで希釈してはまずいようなので、エポキシ樹脂を刷毛塗りする事にしました。

エポキシ樹脂は丁寧に刷毛塗して硬化を待ち(と言っても30℃で3時間位で固まってしまいましたが)この後に行うインフュージョンの樹脂との密着不良を避ける為、固まったエポキシの表面を#1000位のスポンジ研磨材で軽く研いで足付けしておきました。


先日の失敗は単純に樹脂が途中で硬化してしまっただけなので、樹脂の硬化をなるべく遅く、含浸時間をなるべく早くなるように工夫します。

対策1 ガレージ内をエアコンでガンガン冷やして20℃程度まで下げて樹脂の硬化反応を可能な限り遅くする。

対策2 樹脂の含浸距離を減らすように面積を4分割にし、3本の注入ホースを配置し、含浸していく範囲に合わせ順番に注入する方式に、真空引きは両端から引く方法に変更。

対策3 ネット(本式のVaRTMでは「メディア」と呼びます)を二重にして樹脂の通り道を広げて樹脂の流速を上げる。


前回は結局最後まで含浸するまで1時間20分かかりましたが、今回は何と半分の40分!

とにかく樹脂の含浸速度が速かったので、実は途中で樹脂の供給が追いつかず、樹脂供給用ホースからから2回ほどエアを空吸いさせてしまいました。

これは前回樹脂が煙を吹くのを見ているので少量しか樹脂を作らなかったのも原因ですが・・・。

なので確実に2回、全体の真空が無くなってしまったわけで・・・。

前回ほど酷い事にはならないと思いましたが、エアの混入はある程度覚悟しました。

含浸が終わったこの段階ではせめて塗装仕上げで誤魔化して使える程度には仕上がるといいなぁ。などと半ば諦め気味でした。


が、翌日恐る恐る脱型してみると・・・。


あら不思議!きれいに仕上がっているじゃありませんか!

厳密には近づいてよ〜く見るとエアの混入している箇所が数か所ありますが、それもほんの少しで、ちょっと離れると全く分からない程度。

意外と途中でエアが入ってもその後樹脂が硬化する前にしっかり真空引きすれば何とかなるもんなんですねぇ。

また、樹脂の含浸速度も速過ぎたのでカーボンクロスへの浸透不足を心配していましたが、全く問題が無いようです。

夏場の樹脂の硬化時間を考えると、含浸速度は速ければ速い程有利なので、今回の結果は今後のインフュージョン工作にかなり役立つ検証が得られた有意義なものでした。

今回2枚合わせて材料費だけで4万円以上かかってますが「教材費」と考えればそれほど高くはなかったかな(笑)


ゲルコート代わりにエポキシ樹脂を刷毛塗した表面ですが、こちらも全く問題無く、きれいに仕上がっています。

クリアー塗装する事が前提であれば特にゲルコートを用意する必要も無さそうです。


頑丈さも文句なし。

2回目は失敗の1枚目より中に挟む発泡材の面積をギリギリまで大きくし、カーボンクロスだけの薄い部分を減らしました。

指で思いっきり押した程度では全く変形せず、この後興味本位で無謀にも地面に置いたボンネットにそ〜っと乗って正座してみましたが(笑)それでもボンネット全体でちょっと撓む程度でした。


実は1枚目はカーボンクロス3プライと周囲に補強帯という構成でしたが、2枚目は残っていたカーボンクロスを全部使って全面に4プライ、周辺の帯という構成です。

1枚目のボンネットは多少たわみが大きい感じでしたが、ボンネットという使用用途なら特に問題無いかとも思ったのですが、もう少し丈夫な方がいいかなと思って1枚多く積層しました。

1uの面積で積層枚数を1枚増やすと計算上、概ねクロスで200g、樹脂が200〜240g、ざっくりですと1プライ増やす毎に500g弱重くなる計算です。

さて、肝心の重量ですが
ノーマルの鉄ボンネット、7.6kg
完成した4プライのカーボンボンネット、2.0kg

サンドイッチインフュージョン工法で思ったよりかなり軽く作る事が出来ました。
この数字は市販品では中々難しいんじゃないですかね〜。

ボンネット単体で実に5.6kgの軽量化に成功しました。

ちなみに失敗した3プライのボンネットですが、こちらは驚きの1.4kg
樹脂の含浸不足が無く、上手く完成したとすれば1.5kg程度で仕上がったはずです。

惜しいなぁ〜〜〜。


ともあれ早速取り付けです。

このボンネットを作るにあたり、裏骨を作らない事に決めていたので、当然ノーマルのボンネットヒンジは使わない予定でした。

ボンネットに「ワンオフカーボンアンダーパネル2」を製作した際に余分に作っておいたカーボンL字アングル(10プライ2mm厚)を必要な長さに切って接着します。

取付場所を正確に位置出しし、粗目のペーパーで少し削っておきます。

接着には「JBウエルド」というエポキシ系接着剤を使用。

接着にはボンネット製作に使ったエポキシ樹脂を使っても良かったのですが、エポキシ樹脂は少量で作る場合、配合がかなりシビアになるし、粘度調整も面倒だったので、今まで何種類かの接着剤を試してきた中で接着力が信頼できるこの接着剤を使いました。

配合は2種類のチューブから同量出してしっかり混ぜるだけ。簡単です。

価格のわりに量が少ない事と硬化までに少し時間が掛かるのだけが難点ですかね。


接着剤だけでは万が一ってこともあるし、同時にリベットでも固定します。

使用したのは「軟質母材用リベット」というもので、主にFRPとか薄いアルミ板等、ちょっと軟らかめの素材に使用します。

リベッターでカシメるとリベットの先が4つに割れ、割れた部分が花弁のように開いて固定されます。

←の場合、カシメた時にちょうどサンドイッチした発泡材の中で花弁が開くように調整して固定してあります。


ボンネットヒンジはアルミ材で製作。

ボディー側に付くベース部は3mm厚の不等辺アングルを切ったもの。

ボンネットに伸びる部分は3mm厚のフラットバーに軽め穴を開けた物です。

重量は純正のヒンジの半分以下。


ボンネットステーの穴は少し大きめに開けており、少し調整が出来るようにしてあります。

ボンネットのフィッティングはバッチリ。

ちなみにボンネットの表面が曇っているのはこの後に行うクリヤー塗装の為に#1200のスポンジ研磨剤で足付けしたからです。


自作ヒンジには開き過ぎを抑えるストッパーを設けていないのでフルオープンするとここまで開きます。

整備性は最高ですね(笑)


クリヤー塗装をしてプッシュロック式のボンネットピンを取り付けて、

アルト用カーボンボンネット完成!


クリヤーを塗ったら少しあったエア噛みも気になら無い程度になり、まるで市販品。

軽さも出来映えもかなり満足出来る仕上がりになりました。


以前に製作したインレットダクト、アウトレットダクト、ルーバーをまとめて取り付け。



どうせ作り直すのならより軽量なボンネットを作ってやろうと使用するカーボンクロスの枚数を減らし、代わりに3mm厚のハニカムコアマットを挟んでみます。

離型処理してあるメス型にエポキシ樹脂を刷毛塗りして固め、
#1000スポンジ研磨剤で軽く足付けし、カーボンクロスを2枚貼り付けた上にハニカムコアマットを置き、最後にカーボンクロスを1枚載せました。


ただ、これだけだとボンネットヒンジ取付け部付近の強度が心配になったので、ヒンジが取り付く位置のコアマットを切り抜き、3mm厚のアルミ板を配置しました。

アルミ板は一応、荒目のペーパーで足付けしておきました。


超軽量を目指しているので、周囲に帯状に補強のカーボンクロスを貼るのはやめました。


コアマットへの樹脂の含浸速度が読めないので保険を掛けて樹脂の供給ホースの本数と供給口を増やしています。

両サイドから真空引きするのは同じですが樹脂の供給ホースは前回の3本から5本へ。

そのホースへの樹脂の供給もホースの両端から(画像で見ると上下から)行います。

なのでメス型の上にトータル12本のホースが入り乱れております(笑)


今まで真空バッグ内に入る真空引きのホースと樹脂の供給ホースは野菜ネット等を細切りにしてチマチマくるんでしましたが、もっといい方法はないかなと「自宅」で探していると、ありました。

ファイバーテープとかメッシュテープとか呼ばれている壁にパテを塗る際の下地に使うテープです。

幅は概ね50mm位、ちょっと弱いですが一応粘着材が付いているので設置もラクです。

部分的にネットを追加したい場合に重宝しそうです。
樹脂は前回と同じエポキシ樹脂、RF816。

含浸速度は確実に速くなっていますが想定していたよりはコアマットへの含浸には時間が掛かっています。

カーボンクロスだけだったらおそらくこの大きさでも20分程度で完了するのではないかと思われます。


完全硬化後にダクト用の穴を前回のボンネットから写し取って切り抜き、重量測定。

なんと驚きの1233g!

前作のボンネットを同じ条件で計測したところ、そちらは1868g。

635gの軽量化に成功〜。


ただ、薄くても剛性を保つ目的でサンドイッチしたコアマットは真空引きでぺっちゃんこに潰れてしまい、全く剛性が無くフニャフニャ・・・。

せいぜいカーボンクロス3プライが5プライ程度の厚みになっただけといった感じ。

仕方ないので他の方法で必要な剛性を出すことにします。

使用したのは直径12mmnアルミパイプ。

手でグニグニ曲げてボンネットの形状に沿わせます。

アルミパイプの重さはこの長さで約100g。


パイプの固定にはカーボンクロスでの接着を行いますが、アルミ材への接着強度が心配だったので、予めパイプにカーボンクロスを1枚巻いて樹脂で固めてあります。


接着にはカーボンクロスだけではなく、接着剤も併用します。

何かいい接着剤は無いかな〜とホームセンターの売り場を物色していると何やら良さそうな接着剤が。

「メタルロック」という接着剤で、金属と炭素繊維を強力に接着するという代物です。

二液混合タイプなので、JBウェルドと同じようにエポキシ系の接着剤だとは思いますけど「炭素繊維」と書いてあるのに惹かれて購入しました(笑)

ただ、内容量はかなり少ないのに1200円もします。


メタルロックで何カ所か接着し、ボンネットの前側で3箇所カーボンクロス&エポキシ樹脂で接着。

メタルロックはJBウェルドよりやや粘度が低いですが、硬化するまでの時間はかなり早いです。

接着強度に関してはしばらく使ってみないと何とも言えませんね。


接着剤による「化学的接合」だけでは不安なので「機械的接合」も併せて行います。

ヒンジ取付け部に旧ボンネットからカーボンアングルを剥がして移植しますが、ボンネット表面から穴を貫通させ、ボンネット、カーボンアングル、アルミパイプをまとめてボルト&ナットで締めてしまいます。

当然ボンネット表面にはボルトの頭が出てしまいますが、自分で使う物なので気にしません(笑)


ボンネット両サイドに付くアウトレットダクトはリベット留めしますが、外側の2箇所のリベットはボンネット裏のアルミパイプにかかるようにして更に取付強度を上がるようにしています。

ところで今回のボンネットはカーボンクロスに皺が入ってしまったり含浸がちょっと足りない所があったりしてあまりきれいに仕上がらなかったのでボディー色で塗装してしまいました。

この方がカーボン生地の黒いままより日差しによる温度上昇が少ないし、紫外線からの保護にもなるので結果的には良かったかなと無理やり納得してしまうことにします。


ダクト類を全て移植して車体に取り付けて完成。

ダクト類とボンネットピン、全てが付いた状態の最終的なボンネットの重量は1864g

同じ状態で比較して前作より560g軽量化する事が出来ました。

サンドイッチする材質をもっと研究すれば1500g位で作る事も出来るかもしれません。