バキュームレジンインフュージョン成型テスト 2
(VaRTM 工法



さて実際の成型作業に入っていきます。

テスト用のメス型はだいぶ前に作ったインレットダクトのメス型を使います。

メス型は事前に離型ワックス処理をしっかり行っています。

今回はテストという事でゲルコートは使用せず、PVAも塗らずに行います。

まずはカーボンクロスを一枚ずつスプレー糊でメス型に貼り付けていきます。

スプレー糊は接着力によって種類があり、「55」「77」「99」と、数字が大きくなるほど接着力が強くなります。

最初は「99」でテストしていましたが、ちょっと粘度が高く、脱型後の成形品表面に糊が残り易かったので今回は「77」を使用します。

パラパラとクロスに吹きかけてメス型に添わせて貼り付けますが、まだ慣れていないのでカーボンの目が崩れてしまっている部分がありますが気にしないでいきます(笑)


カーボンクロスを3プライ貼り付けたら今度は防草シートを貼り付けます。

これもスプレー糊で貼り付けます。


注)シワはそのまま成形品の裏側に転写されてしまうので、なるべくシワにならないように貼り付けます。

どうしてもシワになる部分は場所ごと切って分割した方が方が良いです。
切ったシート同士が重なる分には特に問題ありません。


次に野菜ネットを載せますが、特に糊付けせず、マスキングテープで簡単に固定しました。

その上にスパイラルチューブを配置し、真空と樹脂のホースを付ける位置にゴム足を置きます。

スパイラルチューブはゴム足の穴の真下、ホースが刺さる部分を少し切り取っておきます

注)ネットはシワになっても重なっても問題ありません。


農POフィルムをクリップシーラーで袋状にし、メス型を中に入れて入り口を閉じます。

袋は余分に大きくしておいた方がシーラーで合わせる際に皺にならずに済みますし、わざわざ皺を作らなくてもそれだけでメス型の形状にフィットするのに都合の良い余白部分が出来ます。

シーリングは完璧にやれば一回でも大丈夫ですが、より万全を期す為に、一回シールした少し外側でもう一周シールして二重にしておくと完璧です。


ゴム足に黒いホースを差し込みますが、実はここが一番鬼門です。

両面テープからクリップシーラーに切り替えて以降のテストで真空漏れが発生したのはこの部分からだけだったからです。

関連動画で何度も見かけた専用のコネクター(商品名は「バキュームコネクターVA1」)でも使用すれば別ですが、こんなゴム足加工品では中々完全に密閉する事が難しいようです。

それでも何度か作業手順を見直し、やっと確実にシール出来るようになりました。

先ずはゴム足のホースを差す穴のところにカッターで十字に小さく切れ込みを入れます。

これは確実に「切って」おきます。

これはちゃんと切れていないとホースを押し込んだ際にビニールシートを引っ張ってしまい、シートに皺が入り易いからです。


差し込むホースは先端を斜めにカットし、その後防水ブチルテープを細切りにして巻き付けます。

テープを巻く位置はゴム足の厚み分くらい、ホース先端がメス型表面に届く位残した位置。

最初の一巻目は特にホースにしっかり密着させて巻き付けます。


ホースを差す際はこのように周囲のビニールシートを指で押さえつけ、ゴム足の上面(平らな部分)に

皺が入らないようにピシっと張った状態で差込みます。


その後上から指でフィルム方向にゴシゴシ押し付けます。

ゴシゴシやっているとこのテープ、だんだんゴムのように粘ってきてテープ状だったものが一体化してきます。

テープの裾野がゴム足の平らな部分を覆うまで広げます。

テープが足りない時はテープを貼り増し、確実にこの部分を覆うまで広げます。


ここまでキッチリやれば真空漏れする可能性はかなり低いはずなので、いよいよ真空引きを開始します。

真空引きはいきなり全開で引くのではなく少しずつ行い、徐々に萎んでくるシートがメス型にしっかり密着するように入隅部や凹部に指で押しながら添わせていきます。

確実に密着するようになってからフルパワーで真空引きします。

真空圧の調整には途中にバルブがあれば便利ですが、バルブはこの時くらいしか使わないので、無くても途中でホースクランプで止めるなりして調整すれば良いです。


真空引きを開始するとゲージの針はすぐに真空の位置を指しますが、実際にポットやホース、シートや繊維の中の空気を完全に抜くにはこの位の大きさの型で10分位掛かります。

完全に真空になったかどうかの目安は「真空ポンプの音」で、まだ空気が残っている状態の時は「ポン ポン」という口をパクパクした時のような音(?)が出ます。

最初は 「ポポポポポポ」だった音が「ポンポンポン」という音に変わり、どんどん真空になってくると「ポン・・・・・ポン」と間隔が長くなり、最終的にはいくら待っても全くこの音がしなくなります

音が止まらない場合は真空になっていないという事なので漏れ箇所を探して塞ぎます)

真空ゲージで確認しても真空引き開始直後より指針の太さ1〜2本分負圧になるだけなんですけどね。

針の位置は非常に重要なので、最大負圧になった場所をマーキングし、必ずそこに針が来るまで真空引きを行うようにします。

エンジンで真空引きを行う時は真空ゲージだけが頼りとなるので、ゲージをよく見て針が全く下がらなくなるまで真空引きします。


ポンプを止めて1時間程放置してゲージが微動だにしていない事を確認。

これで樹脂を注入する準備が整いました。

分かり易くする為、真空の方向と樹脂の流れる方向をテープに書いて記しておきました。

これを見て「あれっ?」と思った人はかなりのインフュージョン通(?)

←コレは通常のインフュージョン工法よりホースが1本余分に取り付けてあります。(テープで四角く囲った部分)

これは何度か行ったテストの中でちょっと気になった点を改良する為に取り付けたもので、思った通りの結果になるか分かりませんが、とりあえず試してみます。

通常はこの部分が無く、ホースはキャッチポットからバギングバックへ、バギングバックから樹脂容器までとシンプルなものになります。


今回使用する樹脂はホームセンターで一般的に売られている物です。

多分パラフィン入り(?)

硬化が早すぎて途中で固まると困るので硬化剤は少な目にしておきます。

樹脂注入過程です。


完全硬化後に脱型。

防草シートは野菜ネットと共に簡単に剥がれてくれました。

成型品はゲルコートを入れていないので表面に艶が無く、繊維感が出ています。

目立つ気泡は見当たりません。


←左が脱型直後、右がクリアー仕上げ後。

ご覧のように成形品を軽く#2000程度の耐水ペーパーで研いでクリアーを塗装するとここまでキレイになります。

ただ、成形品表面にはメス型の離型ワックスがくっ付いてきて塗装の際に「ハジキ」が出るので
ゲルコートは入れておいた方が後始末がラクですね。

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